ソフト/クワイエット
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ブラムハウスが放つ全編ワンショットの衝撃
それは、しずかで、やさしい“怪物”
ソフト/クワイエット 5/19(金)ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
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Trailer

イントロダクション

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『ゲット・アウト』『セッション』のブラムハウス最新作!
”異次元”の映像体験と”人間の恐怖”を暴く
驚愕の90分リアルタイム・スリラー
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 21世紀のハリウッドにおけるホラー、スリラー映画の潮流は、ブラムハウス・プロダクションの躍進に触れずには語れない。プロデューサーのジェイソン・ブラムが2000年に設立したこの映画会社は、『パラノーマル・アクティビティ』『パージ』や再起動版『ハロウィン』といった大ヒット・シリーズを世に送り出し、デイミアン・チャゼル監督の『セッション』、ジョーダン・ピール監督の『ゲット・アウト』で全米の賞レースを席巻。優れた才能と企画を発掘する目利き力、ジャンル・ムービーの醍醐味と新たな可能性を追求する同社の製作スタンスは、世界中の映画ファンの熱烈な支持を得ており、今年も『ハロウィン THE END』『M3GAN ミーガン』といった話題作の公開が控えている。

 そんなホラー&スリラー界のトップブランド、ブラムハウスが新たに放つ『ソフト&クワイエット』は、大胆な撮影手法とセンセーショナルなテーマを融合させた衝撃的な問題作。92分の全編をワンショットで映像化し、アメリカで社会問題化しているヘイトクライム(憎悪犯罪)の狂気をえぐり出す。わずか4日間のリハーサルで撮られたとは信じがたい完成度を誇る本作は、SXSW2022でのプレミア上映で大反響を呼んだのち、映画批評サイトのRotten Tomatoesで86%、Metacriticで 82%の高評価を獲得。このうえなくリアルな没入感と息づまる緊迫感に圧倒されずにいられない体感型クライム・スリラーである。

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ストーリー

とある郊外の幼稚園に勤める教師エミリーが、「アーリア人団結をめざす娘たち」という白人至上主義のグループを結成する。教会の談話室で行われた第1回の会合に集まったのは、主催者のエミリーを含む6人の女性。多文化主義や多様性が重んじられる現代の風潮に反感を抱き、有色人種や移民を毛嫌いする6人は、日頃の不満や過激な思想を共有して大いに盛り上がる。やがて彼女たちはエミリーの自宅で二次会を行うことにするが、途中立ち寄った食料品店でアジア系の姉妹との激しい口論が勃発。腹の虫が治まらないエミリーらは、悪戯半分で姉妹の家を荒らすことを計画する。しかし、それは取り返しのつかない理不尽でおぞましい犯罪の始まりだった……。

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監督メッセージ

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この映画の制作に取り掛かったとき、「なぜこの映画を作りたいと思ったのか」という質問をよく受けました。なぜ白人至上主義の女性たちを題材に選んだのか。どんな目的で、その女性たちを注視知ているのか。そういった質問を受けると、私は思うのです。このテーマを避けることもできるし、そんな人たちなど存在しないと自分に言い聞かせることもできると。この映画に登場する女性たちのような人からは、目を背けていたほうがむしろ安全です。彼女たちを無視することができれば、その存在を消すことができるかもしれないという錯覚に陥るのです。そういった考え方が、白人至上主義を支えています。私には、そのような考えは持てません。なぜなら、そのような女性たちは、毎日の生活において私に脅威をもたらすからです。映画監督として私が下した決断はすべて、絶えず私にまとわりついている脅威がもたらした結果であり、そこには本作のカメラがワンカットで追っている主人公も含まれます。またこのテーマを選んだのは、観客から【安心】を奪うことも目的としています。この映画に登場する女性たちを観て、カメラで追うことを通して、彼女たちに立ち向かうと同時に、観客の皆さんに自分自身と向き合う機会を持っていただきたいのです。私はエンターテインメントを愛しており、映画を観て現実逃避することが大好きです。しかし、そのような映画の存在が歓迎されると同じくらい、私たちに疑問を投げかける映画も歓迎されるべきだと思っています。

私が脚本を書き始めたのは、エイミー・クーパーのビデオが出回った日の翌日でした。エイミー・クーパーとは、セントラル・パークでバードウォッチングを楽しんでいた黒人男性に脅されたと嘘をついて、警察に通報した女性です。私は人種差別の様子を捉えたビデオを見ると、落ち込んでしまうことがほとんどですが、このビデオを見たときは、怒りが込み上げてきました。エイミーを見て、小学校2年生の時に教わっていた教師を思い出しました。この教師は、有色人種の生徒たち全員を、一番レベルの低い読書グループに押し込んだり、私の目の前で私の両親をけなしたりしました。私はそれまで読書力が弱いとか、問題児だとか、できの悪い生徒だとか言われたことは一度もありませんでした。この教師のような女性たちは、狡猾にも、教育や情報の制度の中に潜んでいます。私は白人至上主義のイデオロギーのリサーチを行う中で、オルタナ右翼のイメージが意図的に変えられ、その思想を持つ多くの人々が、賢く、洗練されたインフルエンサーとして、インスタグラムで多くのフォロワーを持っているということを知りました。世界中にいるエイミー・クーパーと同類の女性たちは、ごく平凡で身近にいるような存在であるが故に、人々を惑わせる危険があるのです。

アメリカ合衆国議会議事堂襲撃事件の週に、この映画の資金調達を図ったところ、あっという間に資金を確保しました。3ヵ月の準備期間を経て、出演俳優たちには劇を撮影するのだと伝えました。つまり、最初から最後までワンテイクで撮るということでした。こう決断したのは、この物語が伝統を破るよう意図したものだったからです。典型的な植民地主義を描いた物語にはしたくないという思いがありました。植民地主義が持つ憎しみを受け入れやすくした表現や、今なお続いている植民地主義者たちの犯罪行為を和らげ、赦免するために書かれた偽りのストーリーアークを映し出したくなかったからです。私は憎悪犯罪をありのまま描き出し、観客が1秒たりとも気を抜くことができないような映画を作りだしました。そうでなければ、この映画は偽りということになります。

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私たちが生きる時代のストーリーテリングと映画製作は、非常に危険な状態にあると思います。アメリカのインディペンデント映画は、もう何年も観客を甘やかしてきました。観客や視聴者を慰め、安心させることに集中する時代が続いているのです。(勢力が縮小するどころか拡大している現実があるにもかかわらず)ナチスや秘密結社KKK (クー・クラックス・クラン)のメンバーが、自らの過ちに気付いたり、有色人種の主人公が、人種主義にあふれるこの世界で自らの重大な欠点を正したりという物語が中心です。もちろん、慰めを与えたり、人生には希望があるということを観客に思い出させたりするような映画があることも重要です。しかし、人種差別や白人至上主義に関して容赦するよう促す映画や物語が支持されているのは、非常に残念なことです。そうした間違った物語は、ずっと前から人々の内側にあり、それが白人至上主義を支えてきたのです。

私は、観客の皆さんに安心感を与えたくはありません。この映画に登場する人々は、極悪人でも、「どこかにいるであろう人種差別主義者」でもありません。この映画で皆さんが目にするのは、恐ろしいことをする人間、つまり危険な人たちなのです。もしかしたら、その極悪人、あるいは極悪人の種、また白人至上主義の概念が、あなたにも私たち全員の中にも存在するのかもしれません。隣人、同僚、先生、友達、家族、そして私たちの内面にも確かに存在します。私たちは、その事実に向き合ってみて初めて、暴力がどうやって起こるのか、そして憎しみがどのように募り、広がっていくのかを理解するのです。私は観客の皆さんが自らをどう認識しているのかに関わらず、皆さんがこの映画を自分自身として体験することを望んでいます。主人公エミリーの視点からではなく、公然の秘密を打ち明けられた者として、この映画を体験していただきたいのです。

私は自分の人生において、自分が人の目に映っていない、批判的な目で見られている、偏見を持たれている、憎まれていると感じる時、ぐっと我慢します。わざわざ騒ぎ立てるようなことはせず、水に流して、その影響を受けないようにするのです。しかし、これが自分の愛する人たちに起こった時には、全く反対の行動に出ます。大きな声で騒ぎ立て、怒りを露わにするのです。自分自身ではなく、他の人のために声を上げることのほうが、なぜこれほどまでに簡単なのでしょう? 周囲の人々は、人種差別に対して悲しんでいる私を慰めるために、「彼らの視点から物事を考えてみたらいいよ」「彼らが無知であることを気の毒に思えばいいよ」などと、私はこれまで言われ続けてきました。私は人種差別や白人至上主義を、ずっと彼らの視点から見てきたのです。私を憎む彼らに感情移入し、私の存在に対して彼らが感じる嫌悪感を理解するように努め、平和的な結論を見つけて前に進もうと頑張ってきました。そして、いい加減それに辟易しているのです。それは、ただ【存在】しているだけで、この世界において正当に評価されている白人からチャンスを奪っているということに喜びを見い出さないといけないような感じがして、非常に疲れます。この映画は、最も愛しているものが奪われないように、自分のために立ち上がれという、私の教訓の物語です。自分を守ることは、自分が属するコミュニティや自分が愛する人を守ることにもなります。私にとっては、それは誰よりも、自分の妹を意味しています。芸術家である私たちの仕事は、解決策を提供することではありません。私たちは政策立案者ではありません。芸術家の仕事は、真実を見たまま感じたまま伝えることなのです。

主要撮影の初日の朝、アトランタにあるマッサージ店3件でアジア人女性6人が銃撃され死亡したというニュースを耳にしました。私は撮影現場に到着してから、まず俳優たちと彼女たちの死を悼む時間を持ちました。そして夕方6時34分に撮影を開始し、最初に「カット!」の声をかけたのは、夜の8時でした。私たちはそれから一日中カットなしで撮り続けるということを4日連続で繰り返しました。私は、このチームが達成したことを、心から誇りに思っています。

ベス・デ・アラウージョ(監督・脚本)
ベス・デ・アラウージョ(監督・脚本)

サンフランシスコ生まれ。カリフォルニア大学バークレー校で社会学の学士号を取得し、American Film Institute では MFA を取得した。いくつかの短編作品を制作後、本作で長編デビューを果たしSXSW2023でプレミア上映され審査員特別賞にノミネートされるなど高い評価を得た。特に批評家から絶賛されている。2017年フィルムメイカー誌が選ぶ「インディペンデント映画界の新顔25人」に選出。母親は中国系アメリカ人で、父親はブラジル出身。ブラジルと米国の2つの国籍を有している。『ドント・ウォーリー・ダーリン』(22)、『エターナルズ』(21)に出演したジェンマ・チャンを主演に迎えた新作『Josephine(原題)』を準備中である。

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受賞歴

REVIEWS

キャスト・スタッフ

ステファニー・エステス(エミリー役)

ステファニー・エステス(エミリー役)

アメリカハワイ出身。
ニューヨーク大学芸術学部で学士号を取得し、在学中にデヴィッド・マメットが主宰するアトランティック・シアター・カンパニーで学んだ。卒業後、ニューヨークの「Old Vic New Voices」プログラムによる、25人の注目すべき新人アーティストに選出されている。主な出演作は「ザ・ループ TALES FROM THE LOOP(20)、「Legion(原題)」(19)、「Sunny Family Cult(原題)」(17)などのTVシリーズのほか、『Mary Last Seen(原題)』(短編・10)や、『Bethany(原題)』(17)など、多くのインディペンデント映画に出演している。

オリヴィア・ルッカルディ(レスリー役)

アメリカNY出身。
インディーズ映画ながらスマッシュヒットを記録した『イット・フォローズ』(16)のほか、『マネーモンスター』(16) 、『真夏の体温』(17)、『アフター・エブリシング』(18) 、『ショップリフターズ・オブ・ザ・ワールド』(21)、近年では『Candy Land(原題)』(22)に出演している。TVシリーズでは、デヴィッド・サイモンが手掛け、高い評価を集めたHBOのヒットシリーズ「DEUCE/ポルノストリート in NY」、「Channel ZERO:ブッチャーズ・ブロック」、Netflixの「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」、HBOの「GIRLS/ガールズ」などのテレビ作品に出演している。 最近では、NBCのミニシリーズ「The Thing About Pam(原題)」で、レネー・ゼルウィガーやジョシュ・デュアメルと共演を果たした。

オリヴィア・ルッカルディ(レスリー役)
エレノア・ピエンタ(マージョリー役)

エレノア・ピエンタ(マージョリー役)

数多くのインディーズ映画に出演。中でも『See You Next Tuesday(原題)』(13)での演技についてフィルムメーカー誌で「…彼女ほど独特かつ強烈で、感情をぶつけたくなるくらい現実味を感じるキャラクターはいない。『WANDA/ワンダ』のバーバラ・ローデンや、『こわれゆく女』のジーナ・ローランズに通ずるものがある」と評された。監督としても活動しており短編映画『Ada(原題)』は、ニューヨーク映画祭でプレミア上映された。

ダナ・ミリキャン(キム役)

ニコラス・ケイジ主演『PIG/ピッグ』(22)、トーマシン・マッケンジー主演『足跡はかき消して』(18)『荒野にて』(17)などに出演。TVシリーズでは、「Portlandia(原題)」(11-18)、「Shrill(原題)」(18)、「Pretty Little Liars: The Perfectionists(原題)」(19)、「トリンケット ~小さな宝物~」(19)、「アメリカを荒らす者たち」(17)がある。

ダナ・ミリキャン(キム役)
メリッサ・パウロ(アン役)

メリッサ・パウロ(アン役)

ロサンゼルス出身。モデルとしてキャリアを開始後、テレビや映画作品にも活躍の場を広げている。『スター・トレック イントゥ・ダークネス 』(13)に出演後『Enemy Within(原題) 』(19)、『Addicted to You(原題)』(19)、『SEXテープ』(14)に出演。TVシリーズでは「メル&ジョー 好きなのはあなたでしょ?」(17)や「Death Valley ~密着!ロス市警アンデッド特別捜査班~」(11)などに出演している。

シシー・リー(リリー役)

カリフォルニア州出身。 いくつかのTVシリーズに出演した後、『Sad Eyes(原題)』(20)で俳優として長編映画デビューを果たした。

シシー・リー(リリー役)

ブラムハウス・プロダクション(製作総指揮)

ジェイソン・ブラムによって設立されたアメリカ合衆国の映画やテレビシリーズを制作する制作プロダクション。『インシディアス』シリーズや『ハロウィン』シリーズなどのホラー映画の制作で知られているが『セッション』(14)や『ブラック・クランズマン』(18)のようなドラマ映画も製作しており、両作品ともアカデミー作品賞にノミネートされるという功績を残し、『ゲット・アウト』(17)や『ブラック・クランズマン』(18)は、それぞれアカデミー脚本賞とアカデミー脚色賞を受賞した。
最近では『透明人間』(20)、『ザ・スイッチ』(20)、『ブラック・フォン』(22)を製作。日本公開待機作では人気シリーズ『ハロウィン THE END』(23)や全米で大ヒットを記録した『M3GAN /ミーガン』(23)が控える。

ジョシュ・ピーターズ(製作)

独立プロデューサー。フォーカス・フィーチャーズとフィルム・ディストリクトの専務取締役を務めた経歴を持ち、J・A・バヨナ監督の『怪物はささやく』(16)や、ジェシー・オーウェンスの伝記映画『栄光のランナー/1936ベルリン』(16)、ジャスティン・ティッピング監督の『キックス』(16)、ライアン・ジョンソン監督の『LOOPER/ルーパー』(12)、ニコラス・ウィンディング・レフィンの『ドライブ』(11)、フェデ・アルバレス監督の『死霊のはらわた』(13)、『インシディアス』シリーズなど多くの作品の製作を担当してきた。独立後は A24配給、ロバート・パティンソンとウィレム・デフォーが主演を務めた、ロバート・エガース監督『ライトハウス』(20)やアラン・ボール監督『フランクおじさん』(20)、『あるラブソング』(22)を製作した。